2017年度

スマート林業構築コンソーシアム

2017年度の研究計画を代表する研究成果

 

事業1.木材SCMシステム導入に伴う販売単価向上・コスト削減

 

本事業では、各課題・各地域において構築する木材SCMシステムの導入効果として、販売単価の向上、並びに素材生産から原木流通に至るまでのトータルコストダウンを、それぞれm3当り1,000円ずつ確保することを目指している。
今年度(2年目)開始した実証の成果として、ヒアリングによる想定も含めて、「地域材のブランド化」による販売単価向上、並びに「運送コストの削減」・「市場事務の効率化」・「森林認証事務効率化」・「集約化・経営計画立案業務効率化」によるコスト削減効果が見込まれることが判明した。(表1・図1)
それぞれの項目は100円/m3〜200円/m3の効果額となるものが多く、今後、これらの積み重ね、並びに項目毎の効果拡大により、上記目標数値を達成することが必要となるが、特に効果が大きいと想定されるのは、原木輸送時の積替回数の削減に伴う「運送コストの低減」であり、国産時の用途の中で、価格の向上を見込み難い合板用材・バイオマス燃料用材の比率が高まる中、原木調達コストの約1/5から1/3を占める原木輸送の改善が、木材SCMの構築によって実現する可能性を示唆している。

 

   表1 木材SCMシステム導入における項目別販売単価向上効果・コスト削減効果

 

     2017年度

 

 

   図1 木材SCMシステム導入における項目別販売単価向上効果・コスト削減効果

 

     2017年度

 

 

 

事業2.高精度森林情報活用による低コスト林業の実現

 

航空レーザ計測データを用いた森林資源解析により@現場確認、A地権者説明、B森林経営計画、C施業検討、D作業道作設の5つの業務の効率化と内容の質の向上につながった。5つの業務の必要人工数は233人日であり、効率化により削減できた人工数は37.03人日、人件費に換算すると約74万円、m3あたりでは148円となった(表1)。
間伐事業地においてドローン飛行をして3Dレーザスキャンによる林況調査を行い(図1)、収穫調査の代替をする実証を行った。間伐出材量を100m3/haとした場合の事業人工数が6人日削減となり、m3あたり1,000円の経費削減となった。

 

    表1 高精度森林資源情報の導入による業務効率化の効果
   

 

 

   図1 ドローン3Dレーザスキャンによる林況の計測状況
   

 

 

 

事業3.ICTによる木材トレーサビリティと需給調整の効率化

 

岡山県真庭市が、木質バイオマス発電所への木質チップ供給のために構築しているQRコードを用いたSCMシステム(図1)を、同市において森林認証材にまで対象範囲を拡張するための実証実験を、11/1〜11/21の期間で実施した。
この結果、システム導入に依る森林認証材の証明に必要な事務の効率化により、人件費が205円/m3削減できることが判明した。
また、同システムを福岡県糸島市において糸島市産材を対象に導入した場合、糸島市産材の運送コストが市全体で約500円/m3削減でき、地域材のブランド化により販売単価が市産材全体で約300円/m3上昇することが、関係者へのヒアリングにより推定された。
また、産地還元型木材SCMシステムの設計と開発を行い、群馬県森林組合連合会内に設置した「群馬県木材ネットワークセンター(仮称)」に実装し試験運用を開始した。実装したシステムにより山側(生産者)の供給情報と購入者側の需要情報の調整がパソコン画面上で容易に実行可能となり(図2)、需給調整管理機能の向上に繋がることが確認できた。

 

 

図1 QRカードを用いたSCMシステムの森林認証材・糸島市産材への対象拡張イメージ

 

 

図2 産地還元型木材SCMシステムにおけるPC画面上での実際の需給調整の流れ