研究期間全体を代表する研究成果
1.現場IOTによる作業と生産状況管理(実施内容)
◇群馬県で、現場作業管理支援システムを構築・実証
●素材生産事業での実証データ収集し、現場管理のためのシステムを設計・構築した
◇同じく群馬県で、トラック運材工程管理システムを構築・実証
●実際のトラック運材データを収集し、運材工程の管理・効率化を実証
素材生産事業での実証 トラック運材工程
1.現場IOTによる作業と生産状況管理(研究成果)
◇群馬県で、現場作業及び土場在庫管理システムを使用することで、林内小運搬で134円/m3、
素材生産施業管理で48円/m3のコスト削減効果が明らかとなった。
◇同じく群馬県で、運材管理システムを使用することにより、運送と原木市場経費で、200〜
1,500円/m3のコスト削減効果が判明した。
現場作業および土場在庫管理システム
運材管理システム
2.高精度森林情報活用による低コスト林業の実現(実施内容)
◇三重県松阪市等において、ドローンや地上の3Dスキャナーの利用によって、高精度森林資源情報を取得し、
従来の収穫調査や森林計画策定業務の効率化を実証した。
◇熊本県人吉市における航空レーザ計測データからの高精度森林資源情報の活用により、くま中央森林組合の
集約化コスト削減の実証を行った。
◇福岡県糸島市において、川下の木材需要者が求める川上の伐採計画を林業事業体が作成することを支援する
「伐採計画作成支援システム」を構築し、実証を行った。
地上レーザデータの計測による出材予測とUAV画像の3D化によるICT支援
2.高精度森林情報活用による低コスト林業の実現(研究成果)
◇三重県松阪市等では、所有者への説明、現場管理業務に関わる人件費の削減や有利な採材方法の
選択によって130〜500円/m3のコスト削減効果が明らかとなった。
◇熊本県人吉市では、くま中央森林組合の森林経営計画、間伐施業実施計画、路網計画、地権者への説明、
現場管理業務に関わる人件費を200円/m3削減できることが判明した。
◇福岡県糸島市では、集約化〜伐採計画〜森林経営計画作成に至る業務にかかるコストが153円/m3削減
されることが推定された。
高精度航空レーザ計測解析データの例
伐採計画作成支援システムの画面例
3.ICTによる木材トレーサビリティと需給調整の効率化(実施内容)
◇三重県松阪市で、採材情報と市況情報を取り入れた木材流通の円滑化による森林所有者への有利販売技術を
システム化した。
◇岡山県真庭市で、木質チップ供給用のQRコードを用いた「木質資源安定供給システム」を、森林認証材の
トレーサビリティにまで対象範囲を拡張するための実証を行った。
◇熊本県人吉市有林において、協定を締結し、市場経由販売と製材工場への直送を比較した。また発注者・
受注者間で「受注情報マッチングシステム」の実証を行った。
◇群馬県では、需要情報と供給情報をネットワークセンターで調整する「産地還元型木材SCMシステム」の
実証を行った。
ICTの活用による木材流通の円滑化と
有利販売技術の運用イメージ
QRカードを用いた「木質資源安定供給システム」の運用イメージ
3.ICTによる木材トレーサビリティと需給調整の効率化(研究成果)
◇三重県松阪市では、市況に対応した有利な採材方法の
選択と、出荷ニーズに応じた木材流通の円滑化により、
約1,000円/m3販売単価が向上することが試算された。
◇岡山県真庭市では、「木質資源安定供給システム」運用
に依る森林認証材の証明事務の効率化により、人件費が
208円/m3削減できることが判明した。
◇熊本県人吉市有林の実証の結果、協定・直送では市場経
費が省かれるため2,500円/m3の、
また「受注情報マッチングシステム」を導入することにより
最大で2,000円/m3の販売単価が上昇するシミュレーション結果が得られた。
◇群馬県での実証の結果、安定供給取引効果として457円/m3の販売単価向上となった他、
原木市場の椪積、販売管理、貯木の流通コストが350円/m3削減された。
産地還元型木材SCMシステムにおけるPC画面上での実際の需給調整の流れ
4.木材SCMシステム導入に伴う販売単価向上・コスト削減(成果)
◇コストダウンとしては、それぞれの項目は100円/m3〜400円/m3の効果額となるものが多く、今後、
各項目の積み重ね、並びに項目毎の効果拡大が必要となる。
◇販売単価向上としては、大きく改善する可能性が示されたが、それぞれ想定ベースの金額であり、
実際の取引の場面でのさらなる実証・検証が必要である。
木材SCMシステム導入における項目別コスト削減効果と販売単価向上効果
5.システム導入費用について(考察)
◇本来は、販売単価向上額とコスト削減額の合計から、データ整備費用、並びにシステム導入費用を減じた
上で、システム導入効果額を把握しなければならない。
◇一方、本研究事業においては、既存のデータ・システムの活用(カスタマイズ含む)を行っている場合や、
予算の関係上、一部の機能に限定してシステムを構築・試験運用している研究機関も多く、研究成果として
川上から川中・川下に至るまでの木材SCM構築・運用にかかるトータル費用を算定することは困難であった。
◇一定以上の事業範囲とユーザー数を有する木材SCMシステムを構築する場合は、数千万円の費用規模が予想
される。そのため、システム導入効果をプラスにするためには、当該システムを利用する木材取扱量を年間
10,000m3以上とすることが必要である。
取扱量ごとの木材SCMシステム導入単価(5年総額3,000万円と同5,000万円)